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イチゴ農家と織物職人たちの刺激とチャンスを生み出す挑戦

Challenges that create inspiration and opportunities for strawberry farmers and weavers.

挑战为草莓农民和织工创造了灵感和机会。

みなさん、はじめまして
私は、兵庫県多可郡の播州織りの産地で、先染め織物のトータルコーディネーターをしている松原俊介と申します。私は、日頃、生地の企画に合わせた糸使いから、染色内容・整経・サイジング・織・整理加工までをコーディネートしています。

現在、日本の産地は、跡継ぎ不足や海外製品との価格競争により、縮小や衰退の問題に見舞われています。私のいるこの播州産地も同様の問題を抱えています。産地では、分業体制でモノづくりをしますので、一つのパートが廃業に追いやられると、他のパートにも影響し、それは、生地をつくること全体に影響してきます。さらに今、大量生産で安く作るという従来の考え方から、必要な分だけつくるというやり方にシフトしています。時代の急激な変化や環境の変化に戸惑い、どうやって今後モノづくりをしていけばよいのか、停留してしまっているのが現状です。

私は、生まれも育ちもこの産地で、また、尊敬する父もこの産地で生地を作り販売していました。だから、どうしても父や私たちが愛しているこの播州織を残していきたい。何とかして、この日本のモノづくりの縮小や衰退を食い止め、日本の伝統技術と産地を守り、子どもたちへ受け継いでいきたいと思っています。

この課題を解決するために、今、私がすべきことは、自分たちの強みやできることを生かして、自分たちが活躍できる世界をつくることだと思っています。プロフェッショナルな人たちを適切に繋いでいくことが私の使命です。

それで、始めようと思ったのが、イチゴ農家さんと織物職人たちの刺激とチャンスを生み出す挑戦です。キズがあり商品としては売れないイチゴを提供してもらい、播州産地の未来を創る実験的モノづくりプロジェクトを今から1年前に始めました。
まずは、従来通りの染色方法でイチゴ染めをして、どれくらいの濃度で染まるのかやってみたのですが、結果は、全く染まりませんでした。今までのやり方をしていてはダメ。新たな染料の作り方を試行錯誤し、何度もやり直しをしました。どうしても、播州産地にある設備でつくりたい。ここにあるものでどうやればできるのか、実験を重ねました。従来の工場で安定的に生産できて、商品として安全な堅牢度を保つ染め方とは何か。今までにないノウハウを生み出すことに挑戦したのです。


「染める」ための試行錯誤に半年かけ、ようやくできあがりました。植物や野菜、果物などボタニカルなものを使う場合は、なかなか色の濃度の調整が難しいのですが、その部分もクリアした「PLOW COLORS(耕す色)」という独自の染色方法。この手法を使うことで、通常染めることができないものを、素材そのものの美しさとリラックス感を活かして染めることができるようになったのです。




徹底したサスティナブルな商品開発を行い、自然環境と産地を守るための取り組み

今回一緒にこのプロジェクトに取り組んで頂いているイチゴ農園さんでは、年度によって差はありますが、500kg以上のイチゴを処分します。この流通には乗らなかったイチゴを使って、イチゴ染めを実践しました。

イチゴで染めることにより、化学染料の使用率が通常の染めよりも少ないので、排水負荷は通常の染めより少なくなります。

また、通常の洗い加工では、大量の水を使用しますが、今回は、天日干しを行いますので、洗うための最低限の水で加工しました。
さらに、整経(=サイジング。生地を織る準備工程で、縦糸の必要な本数・長さ・張力などをそろえること。)の際に本来なら使用する糊を今回は使わずに作ります。糊を使わないことで、糊抜き剤のの必要がないのと、糸自身のしなやかさを活かす事が出来ます。

今回、糸は「Unito organic」というオーガニックコットンを使用しています。これは、PBPの活動で支援しているインドオーガニックコットンであり、すべてGOTS認証付です。本当に透明性のあるオーガニックコットンを、ライフスタイルの中に確実に浸透させていきたいという想いから使用しました。
※PBP=PEACE BY PEACE COTTON PROJECT は、2008年に株式会社フェリシモではじまった循環型のプロジェクトです。インド産のオーガニックコットンを使用した製品に基金を付けて販売し、その基金を活用してインドの綿農家の有機農法への転換支援と、農家のこどもたちの就学・奨学支援を行っています。お気に入りのお洋服が、未来の地球の環境保全につながっている。 サスティナブルな循環型社会を、着る人、売る人、作る人がみんなで 手をつないで実現していくプロジェクトです。


※GOTS認証付き=この規格は、有機的に生産された原材料を使用した繊維、そして、アパレルの製造における環境、さらに、労働条件の両方に対するサプライチェーン全体の要件を規定しているものです。有毒で持続性のある殺虫剤や合成肥料を使用せずに、土壌の肥沃度を維持および補充する農業システムに基づいて製造した証明です。この認証が付いている商品は、世界的に認められた要件(Global Organic Textile Standard)を満たしています。

生産と消費をつなぎ、播州で染料や綿花を育て新たな産業を創り出すための取り組み

お金を払って処分していた廃棄物が、新しいモノとして生まれ変わってゆく。

今まで接点のなかった農家と生地職人たち、そしてアパレルデザイナーがタッグを組み、持続可能なモノづくりをして、新たなビジネスの創出に挑戦します。今回のイチゴでうまくいけば、次は、野菜や花や果物などを使って、播州で染料を作っていきたいと考えています。さらに、播州の開いている土地を使って、ゆくゆくは原料である綿花も育てていくことを計画中です
モノづくりには無限の可能性がある
私が、モノづくりのプロとプロを繋いでいくことで、アパレルデザイナーさんの望みである、小ロットや短納期や単価にも寄り添うことができます。数量が少ないから高くなります!という選択肢しかなかった作り方を変え、今までの概念を変えるモノづくりをします。作り手は、オリジナルを作りたいのです。その思いに寄り添うモノづくりの方法を、私は考え挑戦します。作り手がワクワクしてつくることで、その思いはクリエイターたちのファンに届くと思います。そうすれば、みんなでモノづくりの喜びを分かちあえると信じています。



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2021/07/23

Bird fab studio